
デジタルガジェット好きの注目度が高くなっているNothing。性能のみならず、デザインにこだわったワイヤレスイヤホンやスマホをつくるロンドンのメーカです。同社の製品はどのようなところに魅力があるのか、レビューも交えながら紹介します。
1 2020年生まれの新しいメーカ・Nothingとは
Nothingは、2020年にロンドンで生まれたメーカです。「テクノロジーを再び楽しいものにする」というビジョンを掲げ、「見るだけでも楽しく、使うのも楽しい。触れるだけでワクワクする。そんなほかとは違うテクノロジー」を目指しています。
最初の製品はイヤホン、初めてのスマホは2022年に発表
Nothingがはじめに発表したのは、イヤホンです。2021年にクリア素材をつかったノイズキャンセルワイヤレスイヤホン「Nothing Ear (1)」を発売しました。この製品で、Nothingの高いデザイン性が注目を集めました。
続いて2022年7月にNothing初のスマートフォン「Phone (1)」を発表。その後も続々と新しいイヤホンとスマホを発売しています。
手頃で洗練された新ブランド「CMF by Nothing」
2023年9月には、新たなブランド「CMF by Nothing」を立ち上げました。このブランドが目指すのは、多機能でハイスペックな製品ではなく、必要な機能や必要なスペックに絞り込みながらも、高い品質とデザインを備えた普段使いできる手頃な製品です。
スペックには不満を感じないという、バランスが取れたコストパフォーマンスの高さが魅力です。またシンプルということは、余計な機能が無く多くのユーザーにとっても日常的に使いやすいというメリットもあります。
最初のラインナップはイヤホン、スマートウォッチ、充電器でしたが、現在はスマホやスマホ用アクセサリーも販売しています。
サステナブルにも注視している
サステナブルな取り組みにもNothingは力を入れています。Nothing Ear (1) は、カーボンニュートラル(脱炭素)を達成しています。他の製品でもリサイクル素材を多く利用し、スマホのパッケージにはプラスチックを使用していません。
さらに同社のサイトからは、製品ごとの持続可能性レポートもすぐに見られるようになっていて、リサイクル素材の使用率も確認できます。
充実のユーザーコミュニティ
メーカとユーザーの距離が近いのも、Nothingの特色です。ユーザーとのコミュニティの場を用意しており、ユーザーとの交流が活発に行われています。そこから、ユーザーの声を反映したアップデートや新機種の開発にもつながっています。直近では2024年発売のNothing Phone (2a)をベースとしたユーザーコミュニティとの共創モデルPhone (2a) Community Editionを発売しました。
このモデルは、コミュニティから選ばれたメンバーが共同でハードウェアデザイン、壁紙デザイン、パッケージデザイン、マーケティングキャンペーンを行うという、まさにメーカとユーザーが一体となって製品を手がけています。
2 Nothingのスマホの特長
Nothingのスマホは、同社ならではのデザインにこだわった独自機能が最大の魅力です。外観だけでなくOSにまで、一目見ればNothingとわかるこだわりが詰まっています。
独自のNothing OSでホームのデザインも統一

Nothingのシンプルなデザインをホームでも表現できる「Nothing OS」は、Androidベースの独自OSです。様々なアプリのアイコンをモノトーンにし、ホーム画面で統一された世界感を表現できます。同様のデザインに統一したウィジェットも備えているので、ホーム画面やロック画面でデザインを損なうことなく、情報が見やすくなります。
Glyph Interfaceは着信や通知を光で伝える

Nothingが最初に発表したスマホのNothing Phone (1)に搭載し、大きなインパクトを与えたのがGlyph Interfaceです。Glyph Interfaceは背面のGlyphライトと音楽を組み合わせて、画面を見ないでもユーザーに情報を提供するシステムです。現在は、Nothing Phone (2)とNothing Phone (2a)に搭載しています。
Glyph Interfaceは、Glyph コンポーザーを使ってGlyphライトの発光パターンや音を作成して保存し、着信や通知音に設定できます。着信音は個別に連絡先を登録して登録もできるので、Glyph Interfaceだけで誰からの着信かを判断できます。
他にも音量、タイマーの残り時間をGlyphライトの変化で見やすく表示も可能です。この機能で、画面を見ないでも必要な情報を確認できます。音楽や動画にあわせて自動的にリズムを取った発光パターンで演出する機能もあります。
Glyph Interfaceによる通知は音楽をオフにしても利用できるので、静かに過ごしたい場所でも利用できます。画面を点灯しないで静かに通知だけ受け取りたい、という場合は画面を下にしてスマホを置くだけで自動的に切り替えられます。
ChatGPTをイヤホンで活用
NothingのスマホにはChatGPTとの連携機能があるため、Nothing製のイヤホンと組み合わせれば、ChatGPTを音声入力することもできます。ChatGPTからの答えもイヤホンに音声で返ってくるので、スマホを手に持たなくてもChatGPTと会話するようにやり取りが可能です。
3 Nothingのスマホは2シリーズ3機種
2024年現在、Nothingはスマホを以下の2シリーズ展開しています。
・NothingブランドのNothing Phoneシリーズ
・CMF by NothingブランドのCMF Phoneシリーズ
Nothing PhoneシリーズはNothingがスマホとして最初に出したメインブランドです。上述のGlyph Interfaceが使われています。CMF Phoneシリーズは背面カバーの自由な付け替えや、スタンド・ストラップなどの純正アクセサリーも用意されており、カスタマイズ性の高いエントリーモデルです。それぞれのシリーズが持つ魅力を紹介します。
Nothing Phoneシリーズ
Nothing Phoneシリーズは、Nothingのメインブランドです。Glyph Interfaceと基板が見えるトランスルーセント(透明な)ボディ、そしてシンプルなホーム画面をつくれるNothing OSというシリーズの特長があります。
2022年にNothing Phone(1)を発売し、2024年に後継機としてNothing Phone (2)とNothing Phone (2a)が登場しました。Nothing Phone (2)はGlyphライトのパターンが豊富で、プロセッサーも現在販売している中では最上位のモデルです。
一方のNothing Phone (2a)は後から発売したモデルで、Nothing Phone (2)より価格が安くなりましたが、Glyphライトの数が減るなどスペックはダウンしました。
しかし単純にNothing Phone (2)が上位モデルと言い切れないのは、Nothing Phone (2a)にしかない機能もあるからです。それは日本ユーザーの希望を取り入れた、FeliCa搭載によるおサイフケータイ®です。
今回はおサイフケータイ®に対応した最新モデルのNothing Phone (2a)を、レビューでより詳しく紹介します。
Nothing Phone(2)

▼ 基本スペック
画面サイズ | 6.7インチ フレキシブルLTPO AMOLEDディスプレイ |
---|---|
解像度 | 幅1080px高さ2412px |
サイズ | 幅76.35mm×高さ162.13mm×厚さ8.55mm |
重さ | 200.68g |
メモリ | RAM:12GB/8GB ROM:128GB/256GB/512GB |
バッテリー | 4,700 mAh 急速充電対応 ワイヤレス充電対応 |
アウトカメラ | メインカメラ:5000万画素 |
超広角カメラ:5000万画素 | |
インカメラ | 3200万画素 |
Nothing Phone(2a)

▼ 基本スペック
画面サイズ | 6.7インチ フレキシブル AMOLEDディスプレイ |
---|---|
解像度 | 幅1084px高さ2412px |
サイズ | 幅76.32mm×高さ161.74mm×厚さ8.55mm |
重さ | 190g |
メモリ | RAM:12GB/8GB ROM:128GB/256GB |
バッテリー | 5,000 mAh 急速充電対応 |
アウトカメラ | メインカメラ:5000万画素 |
超広角カメラ:5000万画素 | |
インカメラ | 3200万画素 |
CMF Phoneシリーズ
CMF Phoneシリーズは、新たなブランドであるCMF by Nothingから販売しています。このブランドのスマホは、価格を抑えたエントリークラスのCMF Phone 1のみです。
Glyph Interfaceは搭載していません。その代わりにカバーを自分で交換できるという独自の機能があります。カバーは4色展開しており、ケースを交換するのと同じように本体カバーを交換して楽しめます。ほかにも純正のアクセサリーとして、スタンドやストラップ、カードケースがあり、簡単にスマホに取り付けられます。2024年グッドデザイン賞のベスト100を受賞しました。
おサイフケータイ®機能はありませんが、Nothingの3モデルでは唯一MicroSDカードに対応しています。
こちらのCMF Phone 1も、今回実機レビューでより詳しく紹介します。
CMF Phone 1

▼ 基本スペック
画面サイズ | 6.67インチ スーパーAMOLED LTPSディスプレイ |
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解像度 | 幅1080px高さ2400px |
サイズ | 幅77mm×高さ164mm×厚さ8mm/9mmヴィーガンレザー |
重さ | 197g/202g(ヴィーガンレザー) |
メモリ | RAM:8GB ROM:128GB/256GB |
バッテリー | 5,000 mAh 急速充電対応 |
アウトカメラ | メインカメラ:5000万画素 |
インカメラ | 1600万画素 |
4 Nothing Phone (2a)をレビュー!

実際にNothing Phone (2a)を使ってみると、デザインだけではない魅力が見えてきました。
見た目だけでなく樹脂のはだ触りが優しい本体

Nothing Phone (2a)の最大の特長は、デザインです。箱から取り出した瞬間に、その特長的な透けて基盤やカメラユニットが見えるボディに目を奪われます。透けて見える素材は樹脂なので、ガラスや金属とは違う、やわらかく温かみのある手触りです。背面へのラインはなだらかなので、手で握ったときもエッジが気になったりもしません。透けて見える配線とカメラで、人や表情のあるロボットのようにもみえるのも、かわいらしくて良いポイントです。
重さは、手元のキッチンスケールで量ってみたところ192g。最近のスマホでは平均的な重さです。
側面にあるスイッチは、正面右に電源、正面左にボリュームアップ、ボリュームダウンの合計3つ。SIMスロットは下部にあるUSB-Cコネクタの横に並んでいます。電源ボタンとボリュームボタンが別の側面にあるのはちょっと珍しい構造でしょう。


なお、シリーズを象徴する機能のGlyph Interfaceも、発光する場所は3ヶ所減少。しかし日本のスマホユーザーにとって重要な機能である「おサイフケータイ®」機能を、Nothingのスマホとしては初めて搭載しました。
Nothingの魅力Glyph Interfaceを堪能できる!
Glyph コンポーザーは5つのパッドで音と光を組み合わせて、オリジナルの音楽を創れます。ライトが3つなのに5つもパッドがある秘密は、同時発光の組み合わせにあります。また9つある音のジャンルで、まったく違う音楽を生み出せるだけでなく、発光パターンも短くなったり長くなったりと音楽に合わせたバリエーションがあります。

この機能は楽譜や既存の音楽から入力するというより、自由にパッドを叩いて自分だけの音楽と光のコラボレーションを生み出すことを楽しむスタイルなので、着信音や通知音が人と同じになることもありません。

2種類の光源が暗いところの撮影で力を発揮
Glyph ライトは、写真撮影にも役立ちます。スマホの撮影でもライトをつかってフラッシュやライトをあてた撮影ができますが、そこにGlyph ライトも利用できるのです。それぞれのライトで色が異なるため、写真のできあがりも違った雰囲気になります。そしてほかの光源が無い夜でも、ブレずに撮影できる力があるのも使いやすいカメラと言えるでしょう。

左がGlyph ライト使用、右がライト使用で撮影した作例です。
5 CMF Phone 1をレビュー!

こちらは、カバー交換ができるCMF Phone1。右下の大きなネジは、公式アクセサリーをつけるために使います。
カバー交換という新しい遊び心
CMFから発売されているCMF Phone 1。価格はNothing Phone (2a)よりも安く、現在Nothingが発売しているスマホの中では一番安く購入できます。異なるブランドから生まれたスマホなので、デザインがNothing Phoneシリーズとは大きく異なります。Glyph Interfaceを搭載しておらず、そのためボディもスケルトンではありません。その代わりに備わったのが、本体カバーを交換できるという特長です。
付属しているマイナスドライバーを使えば、自分でカバーを外せるのです。交換カバーを購入しておけば、季節でカラーを変えたり、カバーが汚れたり傷ついたときにリフレッシュもできます。オリジナルのイラストやプリントを直接カバーに書いたりするハードルも低くなります。コミュニティからは、自分でカバーが作れる3Dプリンタ用のデータも入手できます。
マットな手触りとネジがあることでのメカニカルなデザイン

それでは実際に、本体を手に取って見ていきましょう。まず手元のキッチンスケールで重さをはかってみたところ、201gでした。手に持ったところ、やや重く感じます。カバーはマットな仕上がりで、滑りにくく汚れも目立ちません。ただエッジは角張っているので、握ったときに角が当たります。しかしこの角張ったデザインが、カバー取り外し用のネジやアクセサリー用のネジと合わさって、よいデザインの味になっています。


右側面に電源スイッチ、左側面にボリュームアップ、ダウンと、ボタンは合計3つ。端子は下部にUSB-Cコネクタ、コネクタの右にSIMとMicroSDカード兼用のスロットがあります。この構造は、Nothing Phone (2a)と同じです。
なお、この端末はドコモやauのプラチナバンドに一部対応していません。おサイフケータイ®機能も非対応です。代わりにタッチ決済や交通電子マネーを使いたい場合は、アクセサリーのカードケースを使って対応できます。
Nothing Phone (2a)とCMF Phone1についてはIIJmio公式YouTubeでも解説しています。ぜひご覧ください。
6 ほかの人が持っていないデザインのスマホを求める人にオススメ!
ここまで紹介してきたNothingのスマホですが、スペックはミドルクラス、エントリークラスでそれぞれ上位に来る力を持っています。そのため、スペックを求めて購入しても、満足できるでしょう。しかし、やはりNothingのスマホ最大の魅力は、その独創的なデザインにあります。
実用性と高いデザイン性の共存を求めるならNothing Phone (2a)
Nothing Phone (2a)は、おサイフケータイ®機能を搭載しミドルクラスの中ではプロセッサーも上位の性能を持っています。それでいて価格は約50,000円とミドルクラスの中では安価な部類です。なにより、Nothingの象徴ともいえるGlyph Interfaceを備えています。Glyph Interfaceを体験できて、おサイフケータイ®も使えて、そして一番安いスマホ、それがNothing Phone (2a)なのです。基本機能が優れているので、どんな人でも使いやすいコスパに優れた一台です。
機能を削ってもパワーを選びたい人にCMF Phone 1
CMF Phone 1は初めてのスマホよりもスマホの使い方が分かり、自分に必要な機能と不要な機能が明確になった人にオススメです。ネジが見える無骨なデザインやNothing OSのシンプルなホーム画面が好みの人にも、良い選択肢となるでしょう。
CMF製ワイヤレスイヤホン「CMF Buds」とセットになったIIJ限定の発売記念BOXなら、購入して直ぐにChatGPTとの対話も実現できます。イヤホンはノイズキャンセリング機能を搭載していて、日常的に音楽や動画などのメディアも快適に楽しめます。イヤホンはNothingの原点なので、よりNothingの魅力を体験できるセットといえるでしょう。
※ 『おサイフケータイ』は株式会社NTTドコモの登録商標です