
スマホを使うには、本体内に「SIM(シム)」という小さいカードを装着する必要があります。 SIMはキャリアがユーザーに貸し出すもので、「契約したキャリア」や「電話番号」などのデータが記録されています。 そして、このSIMがスマホに装着されていないと、「電話回線での音声通話」や「データ回線を使ったインターネット通信」はできません。最近は従来のSIMカードに加えて、「eSIM(イーシム)」を利用できるキャリアや機種が増えてきました。本記事ではeSIMの特長やメリット・デメリット・注意点に加え、対応機種についても解説します。
1 eSIMとは? SIMカードとの違いは?

「eSIM(Embedded SIM)」とは、SIMカードと同じ機能を「データ」として機器本体に内蔵する仕組みです。SIMカードを装着するのではなく、スマートフォンやタブレット等の端末内にあらかじめ埋め込まれたチップに、インターネット経由で契約情報を書き込みます。

SIMカードが「物理的なSIM」であるのに対し、eSIMは「電子的なSIM」といえるでしょう。
従来、SIMといえばSIMカードのことでした。しかしeSIMが登場してからは、その利便性から徐々にeSIM対応機種が増えています。 2025年3月現在では多くのスマホがeSIMに対応しており、米国向けのiPhone14ではSIMカード差込口(スロット)が廃止されてeSIMのみ対応になりました(※日本国内向けのiPhone14・iPhone15・iPhone16には、SIMカード差込口(スロット)が搭載されています)。 いずれ、SIMの主流はeSIMになっていくのかもしれません。
2 eSIMのメリット

eSIMにはどんなメリットがあるのでしょうか?解説していきましょう。
オンラインで手続きが完結する
SIMカードは、自宅に送付してもらうか店頭で受け取る必要があるため、申し込んでから利用可能になるまで一定の期間が必要です。
それに対してeSIMは、ウェブから申し込みを行ない、端末側で設定をすればすぐに使えるようになります。SIMカードが届くまで待つ必要も、店頭まで外出する必要もありません。
そのため、キャリアの乗り換えや機種変更もスムーズです。たとえばキャリアを乗り換える際、SIMカードの場合は返送が必要になります。しかしeSIMならばその手間はありません。
また機種変更の際も、SIMカードの場合はカードの抜き差しに加え、対応するカードサイズが異なる場合に再発行してもらわなければなりません。そしてSIMカードを差し替えたあとは新しい機種での設定作業も必要になります。
でもeSIMなら、カードサイズを気にする必要はありませんし、iPhoneならSIMの設定を旧機種から新機種にワイヤレスで移行できる「eSIMクイック転送」を利用することもできます。※
※IIJmioなど格安SIM事業者では利用できない場合があります。
IIJmioの音声eSIMなら最短即日、データeSIMなら最速30分以内で使えるようになりますよ。
紛失や破損のリスクがない
キャリアの乗り換えや機種変更の際、SIMカードは機種本体から抜き差しする必要があります。その際、小さいので紛失する心配があり、乱暴に抜き差しすると破損してしまうことも。
その点eSIMは画面上で設定するだけなので、カードの紛失・破損といった心配がありません。
複数キャリアを組み合わせることができる
eSIMは「デュアルSIM」の際にも便利です。デュアルSIMとは、1台のスマホで2つのSIMを使い分ける機能です。

デュアルSIMをSIMカードで行なうには、2枚のカードを装着するためスマホに2つのSIMスロットが必要ですが、SIMスロットが1つしかないスマホをお持ちの方もいるはず。
そんなとき、eSIM対応のスマホなら、SIMカードを装着しつつeSIMで別のSIMを利用する、という使い方が可能です。つまり「SIMカード+eSIM」で2回線を使うことができるわけです。

仕事とプライベートで使い分けたり、複数キャリアのプランを組み合わせて月額料金を安く抑えたりすることもできます。たとえばIIJmioの「データeSIM」など、データ通信専用のeSIMを取り扱っている事業者もあります。
データ通信専用のeSIMの場合、インターネット接続やテザリングは可能ですが、電話回線での音声通話やSMSの送受信はできません。ただしX(旧Twitter)やZoomといったインターネット接続を利用した音声・動画での会話は可能です。
もし音声通話もしたいという場合は、音声通話対応のSIMカードと組み合わせてデュアルSIMで使えばOK。 データ通信はeSIMで契約したキャリアで、音声通話をしたいときにはSIMカードで契約したキャリアで…という使い方もできます。
たとえばメインSIMは大手キャリアのものを使用し、もうひとつのeSIMはデータ通信専用にしてIIJmioなどの格安SIMを契約する・・・といった使い方なら、月々の料金を抑えながら大容量データ通信をお安く利用することができますよ。
また、キャリアを1社にしているとその回線に障害があった場合、通話もインターネット通信も利用できません。そのキャリアの回線を利用している格安SIMも、影響を受けます。
そんなとき、メインで利用しているキャリアとは別の通信網の回線をeSIMで契約していれば、万一の場合もそちらを利用することができます。たとえばメインでau網の回線を使っているなら、ドコモ網の回線をeSIMで契約しておく…などです。
現代において、外出中にスマホが利用できなくなるというのは予定を大きく狂わせることになりかねない深刻な事態。万一に備えてサブ回線を用意しておけば安心です。
海外出張/旅行のときも便利!
海外出張や旅行の際に用いる通信手段として、ポケットWi-Fiのレンタル、現地でプリペイドSIMカードの購入などが考えられますが、eSIMの場合は海外の回線をオンラインで契約/購入し、設定するだけで現地でも利用できます。
また、海外出張や旅行の際に心配なのが、スマホ端末の盗難や紛失です。SIMカードは誰でも取り出すことができてしまい、スマホの位置情報が把握できる設定にしておいても利用できなくなってしまいます。でもeSIMなら、たとえスマホが他人の手に渡っても「SIMを取り出す」ことはできません。また、海外で別のSIMを使う場合にも、eSIMなら入れ替える手間がないので、落として紛失するといったトラブルとは無縁です。
iPhoneなら、8個以上のeSIMを保存しておくことが可能です。たとえば「フランスに行くときだけ使うeSIM」なども、本体に保存しておけば切り替えるだけで使うことができ、SIMカードのようにどこにしまったか忘れて慌てるということがありません。
3 eSIMのデメリット・注意点

よいことばかりのように思えるeSIMですが、気をつけないといけない点もあります。
キャリアによっては利用できない
eSIMは、すべてのキャリアで取り扱っているわけではありません。そのため、eSIMを利用したいと思っても、キャリアが扱っていなければ諦めるしかありません。
現在eSIMを取り扱っているキャリアの例は以下です。
大手キャリア | ・NTTドコモ ・au(KDDI) ・ソフトバンク ・楽天モバイル |
---|---|
オンライン専用ブランド・プラン サブブランド |
・ahamo ・povo ・LINEMO ・UQ mobile ・Y!mobile |
MVNO(格安SIM) | ・IIJmio ・mineo ・日本通信SIM など |
最近では多くのキャリアがeSIMに対応するようになりましたが、特にIIJmioは他社にさきがけて2019年からeSIMを導入したキャリアです。使い方に合わせて様々なプランを選べるので、お得に使えます。 もちろんSIMカードも扱っているため、「音声SIMカード」「音声eSIM」「データSIMカード」「データeSIM」など、さまざまな形状とプランから選べます。
対応端末が限られている
eSIMを利用できるのは、eSIM対応の端末のみです。手持ちの端末がeSIM非対応の場合は、対応しているものに買い換える必要があります。使っているスマホがeSIMに対応しているか知りたい方は、以下から確認してみてください。
【手持ちのスマホがeSIM対応か知りたい方にオススメ】
あなたのiPhoneはeSIM対応?お手持ちのスマホを確認してみよう
端末故障や機種変更の際に再発行の手間がかかる
端末故障や機種変更の際、SIMカードの場合は端末から取り出すだけで、他の端末でも使用できます。しかし、eSIMは取り出しができないので、SIMを再発行したうえで新しい端末を使って開通手続きを行うため、手順が少し複雑になります。
たとえば、プロファイルの管理や設定です。eSIMのプロファイルとは、通信キャリアの契約情報や設定がデジタル形式で保存されたデータです。プロファイルを利用するには、専用のQRコードをスキャンしてダウンロードする、キャリアのアプリを使用するなどの設定を自分で行う必要があります。
4 eSIMはこんな人におススメ

eSIMは手軽でお得だからこそ、下記のような方々に特におすすめです。
お得なプランがあったらすぐに乗り換えて使いはじめたい人
eSIMなら契約から利用開始までオンラインで手続きできるから、スムーズにキャリア乗り換えられます。料金や使い方にあわせて最もコスパがいいプランを選んで使いたいという方にはぴったりです。
データ通信料金を抑えつつ、大手キャリアのプランのいいところどりもしたい人
たとえばキャリアメールを使い続けたい/大手キャリアの通信環境は持ち続けたいけれど、ついつい使いすぎてしまうデータ通信料金をもっと安く抑えたいという方の場合、デュアルSIM使いにして大手キャリアのプランに格安SIMを組み合わせるのがおすすめです。
タブレットやノートPCを安く手軽に通信対応にしたい人
外出先でタブレットやノートPCを使うことが多いからモバイル回線対応にしたいけれど、料金はなるべく抑えたい…という方も多いのでは? タブレットやノートPCではデータ通信しかしない場合が多いので、音声通話非対応で月額料金の安いデータeSIMプランがぴったりです。